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事業会社がAI戦略で、最初に失敗する1つの判断

事業会社がAI戦略で、最初に失敗する1つの判断

AI導入に取り組む事業会社が増えている。しかしその多くが、最初の一手で方向を誤り、6〜12ヶ月後に「やり直し」を余儀なくされる。問題は技術でも予算でもなく、最初に下す判断の順序だ。

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事業会社のAI戦略における最初の失敗は、「どのツールを使うか」から始めることに集約される。この1つの判断が、その後の全てを詰まらせる。

「ツール先行」がなぜ失敗するのか

事業会社の経営者がAI戦略を検討し始めると、多くの場合ベンダー営業から「Copilot」「Claude」「ChatGPT Enterprise」などのプロダクト説明を受ける。デモは印象的で、「これで生産性が上がりそう」という感覚になる。しかしここでツールを先に決めることが、最初の失敗だ。

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従業員140名の地方金融関連サービス会社A社は、取引先の大手SIerから「まずCopilot M365を全社展開しましょう」と提案を受け、年間800万円のライセンスを契約した。展開から半年後、利用率は全体の18%。理由を調べると、「各部門がどのツールでどの業務をどう変えるか」の設計がなされていなかった。担当者はツールを受け取ったが、使い方が分からなかった。

ツールを先に決めると必然的にこうなる。ツールの仕様に業務を合わせようとするため、業務改善が目的から手段になる。現場は「なぜこのツールを使うのか」が分からないまま、利用を強いられる。

正しい起点は「業務の痛み」から始まる

正しいAI戦略の起点は、**「自社のどの業務が、誰にとって、何時間の痛みになっているか」**という業務の棚卸しだ。

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ツールの話は、この棚卸しが完了した後で初めて意味を持つ。「月100時間の経理入力作業」という痛みが特定されれば、「それはOCR連携と生成AIで自動化できる」という技術選定が自然に導かれる。「営業提案書の初稿作成に毎回3〜4時間かかる」という痛みが特定されれば、「テンプレート×生成AIで1時間以内に短縮できる」という解決策が見えてくる。

コアネストでは、AI戦略の支援において必ず「業務の痛みリスト」作成を最初に実施する。部門ごとに「最も時間を取られる作業トップ3」と「その月間工数」を出してもらうだけで、AI適用の優先順位と期待ROIが明確になる。この作業に1〜2週間を投じることが、その後の6ヶ月を決定づける。

「1つの判断」を正しく下すための3ステップ

最初の判断を正しく下すための実践的なステップは3つだ。

第一に、全部門で「月間工数が大きい業務トップ5」をリストアップする。部長クラスが1時間のワークショップで出せるレベルで十分だ。細かい分析は後でいい。

第二に、そのリストを「定型業務」と「判断業務」に仕分ける。定型業務(請求書入力・議事録・定型メール・データ集計など)はAI適性が高く、判断業務(交渉・企画・例外対応など)は人が担う領域だ。この仕分けが、AI適用スコープを決める。

第三に、定型業務の中から「金額インパクトが大きいもの上位2〜3業務」を選び、そこにAIを適用する試験設計を立てる。これがPoCの正しい起点であり、ツール選定はこの段階で初めて検討する。

ツールを先に決めた場合のリカバリー

すでに「ツール先行」で失敗している場合でも、リカバリーは可能だ。ただし方法は「ツールを変える」ではなく、「業務棚卸しをやり直して、今のツールでどの業務に適用するかを設計し直す」ことが正解だ。

ツールそのものは多くの場合、機能的には使える。問題はどの業務に使うかの設計がない点だ。ここを後から整備することで、既存ライセンスの活用率を高め、投資を活かすことができる。ただし、業務設計なしにツール変更だけ繰り返しても根本は解決しない。

AI戦略で最初に下す判断が、「ツール選定」から「業務の痛みの可視化」に変わった時点で、方向は正しくなる。その判断を今日することが、最も投資対効果の高い一手だ。

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